経口栄養剤、エンシュアHの成分組成、カロリー、特徴、副作用について解説しています。
エンシュアH:経管栄養剤
エンシュアHは、食事摂取が困難な場合の栄養補給に使用される薬です。
歳を取るにつれ、
- 消化管の働きが弱くなる
- 味覚が鈍くなる
- 飲み込みづらくなる
などによってどうしても食欲が低下してしまいます。
食事から十分な栄養を摂取できなければ、低栄養状態となります。
低栄養状態では、
- 免疫力の低下
- 筋力、骨量の低下
- 認知機能の低下
などさまざまな疾患のリスクを上げてしまいます。
エンシュアHの成分組成、カロリー、特徴
低栄養状態を改善するために、経腸栄養剤や輸液が使用されます。
栄養の摂取方法によって以下のように分類分けされます。
胃腸機能が働く場合は経腸栄養剤を、胃腸機能が働かない場合は輸液が使用されます。
経腸栄養剤はさらに、消化の必要の有無で半消化態栄養剤、消化態栄養剤に分かれます。
輸液は末梢静脈から入れるもの、中心静脈から入れるものに分かれます。
エンシュアHは、半消化態栄養剤です。
半消化態栄養剤は、胃における消化を必要としません。
しかし、腸によってタンパク質と脂質を消化する必要があります。
そのため、エンシュアH中の糖質はデキストリンに分解されていますが、タンパク質はカゼインや大豆が使用されており、脂質も消化態栄養剤より多く配合されています。
エンシュアHの栄養成分組成は以下の通りです。
栄養成分組成 | 含有量[1缶=250mL中] | |
---|---|---|
三大栄養素 | タンパク質 | 13.2g |
脂肪 | 13.2g | |
糖質 | 51.5g | |
ミネラル、微量元素 | ナトリウム | 300mg |
カリウム | 560mg | |
カルシウム | 200mg | |
マグネシウム | 75mg | |
塩素 | 510mg | |
鉄 | 3.38mg | |
亜鉛 | 5.63mg | |
マンガン | 0.75mg | |
銅 | 0.38mg | |
リン | 0.20mg | |
ビタミン | レチノール[ビタミンA] | 938IU |
コレカルシフェロール[ビタミンD] | 75IU | |
酢酸トコフェロール[ビタミンE] | 11.3mg | |
フィトナジオン[ビタミンK] | 26.3μg | |
チアミン[ビタミンB1] | 570μg | |
リボフラビン[ビタミンB2] | 650μg | |
ピリドキシン[ビタミンB6] | 750μg | |
シアノコバラミン[ビタミンB12] | 2300μg | |
アスコルビン酸[ビタミンC] | 57mg | |
ニコチン酸アミド[ナイアシン] | 7.5mg | |
パントテン酸 | 1.88mg | |
葉酸 | 75μg | |
ビオチン | 57μg | |
コリン | 0.20mg |
この表の値は、エンシュアH250mL中の数値です。
エネルギーとしては、1缶250mLで375キロカロリー[kcal]摂取することができます。
つまり、従来のエンシュアリキッド[250kcal/250mL]と同じ量でも1.5倍のカロリーを摂取することができるのです。
エンシュアHは、塩分制限や水分制限のある患者さんの場合、食塩相当量が0.76g、水分量が194mLで計算します。
やっくん
エンシュアHは、消化がある程度可能な半消化態栄養剤として働くことによって、低栄養状態を改善します。
エンシュアHの使用、保管方法
エンシュアHは調製不要の半消化態栄養剤です。
バニラ、コーヒー、バナナ、黒糖、メロン、ストロベリー、抹茶と7種類の味が販売されています。
しかし、250mLで375kcalと従来品より高カロリーの経腸栄養剤であるため、高齢者では上手く服用できない場合があります。
そのため、原液を水で溶かしたり、湯煎や冷凍、とろみ剤を加えてゼリー状にすることを考慮するケースがあるかと思います。
製造メーカーに問い合わせたところ、脂質やタンパク質、熱に弱いビタミン類を含んでいるため、湯煎や冷凍は好ましくありません。
「液体で服用が困難な場合は固形化しゼリーのように服用することができます。」と回答してくださいました。
エンシュアHの服用方法:固形化しゼリーのように服用
固形化し服用する場合は、寒天を使う方法が推奨されています。
- 2gの寒天を水200mLに溶かします。
- 一度煮詰めた後、常温で冷まします。
- エンシュアHを50~60℃になるよう湯煎します[3~4分程度]
- 2の寒天を3に加えよく混ぜ、固まるまで冷所で冷やして完成です。[約2時間程度]
エンシュアHの開封後の使用期限
エンシュアHは一度には飲めないこともあり、複数回に分けて飲む場合もあります。
エンシュアHの開封後の使用期限は72時間まで試験されており安定性は問題ないことがわかっています。
しかし、開封後は外部からの微生物汚染に注意しなければなりません。
そのため、微生物汚染が起こりにくいと考えられる医療機関では開封後48時間、介護施設や自宅の場合は開封後24時間以内に使用します。
なお、開封後については冷所に密閉して保管し、服用時はコップに注いで服用します。
エンシュアHの副作用
エンシュアHは、食事摂取が困難な場合の経管栄養剤として、1995年に発売された薬です。
エンシュアHの副作用としては、下痢[9.1%]、胃部不快感[1.8%]、腹部膨満感[1.2%]等が報告されています。
エンシュアHのカリウム量
エンシュアHは、高齢で食事摂取が難しい方に使用されるため、カリウム値に注意しなければなりません。
腎機能低下の方にも使うため、意外とカリウム値が高くなる方に遭遇します。
エンシュアリキッド1本中に370mg、エンシュアH1本中に560mgのカリウムを含みます。
一方で、エネーボは1本中に300mgと比較的にカリウム量が少ないため、エンシュアリキッドやエンシュアHを服用して高カリウム血症になった場合は、エネーボや市販の栄養剤への変更を検討すると良いでしょう!
エンシュアHの禁忌
- 牛乳タンパクアレルギー
[牛乳由来のカゼインが含まれているため、ショック、アナフィラキシー様症状を引き起こすことがあります。] - タンパク質や電解質の厳密な制限が必要な急性腎炎、ネフローゼ、腎不全末期
[病態が悪化するおそれがある] - 悪心、嘔吐、下痢を合併している心不全患者[病態が悪化するおそれがある]
- 妊娠3ヵ月以内又は妊娠を希望する婦人へのビタミンA 5,000IU/日以上の投与